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- 感染症流行とこころのケア
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が日本中、そして世界中で猛威を奮っています。日々増える感染者数や変化する社会情勢に、わたしたちはみな不安を抱き、大きなストレスを感じています。
わたしたちは今、この不安やストレスとどう付き合っていけばいいのでしょうか。
1. だれにでも起こるこころの反応
わたしたちは不安になり、ストレスを感じたときに様々な感情を抱きます。新型コロナウイルス感染症が流行している今、次のようなことを考え、感じたことはありませんか。
- コロナウイルスにかかってしまうのではないか。ウイルスにかかって死んでしまうのではないか。
- 仕事を失ったらどうしよう。
- 感染したかもしれないと思われたら、周りの人から差別されるのかな。
- 大切な人を守れないかもしれない。
- 検疫によって大切な人から引き離されてしまうのではないか。
- 自宅待機を指示されたけれど、一人でいるのがつらくて涙が出る。これからのことを考えられない。
そしてこの流行の状況が長く続いてしまったとき、わたしたちは絶え間なく続く不安やストレスを感じ、次のようなことがらも起きるかもしれません。
- 患者さんやそのご家族に間違った見方をし、仲間外れにする。
- 国や地方自治体へ怒りが向かい、攻撃する。
- 子どもや配偶者へ怒りが向かい、暴力を振るう。
- 病院・医院に行くことを避け、受診しなくなることによる持病の悪化。
- アルコール、薬物、インターネット、ゲームへの依存。
こういった感情を抱くこと、行動を取ることは、決して特別なことではありません。今の非常に厳しい状況の中において、周りの人たちが、そしてあなた自身も同じように感じて悩んでいるかもしれません。
2. こころの反応への支援
こういった不安やストレスに悩んでいる人に会ったとき、あるいはあなたが悩んでいるとき、どういった支援ができるでしょうか。悩んでいる人それぞれの状況によって、できる支援は様々です。
- 患者さんや回復した人、隔離された人、患者さんのご家族は強い不安やストレスを感じているかもしれません。どんな支援ができるか、考えてみましょう。
- 新型コロナウイルス感染症により大切な人を亡くしてしまった人がいます。ご遺族が喪に服す時間を大切にしましょう。
- 不正確な情報を鵜呑みにして、周りの人に伝えていませんか。誤った情報は偏見や差別を生むことがあります。正しい情報を発信しましょう。
- アルコールや薬物の使用量が増えてしまった、インターネットやゲームをする時間が増えてしまった人は、ウイルス流行前の量・時間に戻しましょう。
高齢者や障害を持つ人、子どもたち、隔離されている人へは、どういった支援ができるでしょうか。
〇 高齢者への支援
高齢者は一般的に若い人に比べて免疫力が下がり、新型コロナウイルス感染症による重症化率・死亡率も高い傾向にあります。さらに情報源が限られていることも多く、不安やストレスを抱きやすいと言えます。
特に認知機能に衰えがある方は感染や隔離により、一層大きな不安やストレス、怒りを感じやすくなります。
- ご家族や医療・介護等の専門職が、高齢者の感情に注意を払い、できる支援を考えましょう。
- いま社会で何が起こっているか、高齢者にわかりやすい言葉で伝えましょう。明確な情報を、敬意を払って、必要ならば繰り返し伝えることが重要です。
- 外出を控えることで体力が落ちていくことが心配されます。簡単な運動を一緒にやってみましょう。
〇 障害を持つ人への支援
感染の流行中には必要な介護を受けることや、感染のリスクを減らすために重要な情報を手に入れることが難しくなります。
- 視覚や聴覚などの感覚障害、知的障害、認知機能障害、心理社会的障害を持つ人たちが手に入れやすく理解しやすい情報を提供しましょう。ときに文字による情報のみでは十分に伝わらないことがあります。
〇 子どもたちへの支援
子どもたちは大人の愛情を必要としています。大人にしがみついたり、引きこもったり、怒りやすくなったり、悪い夢をみたり、おねしょをしたり……、普段と違う様子はありませんか。困難なときこそ、子どもたちに一層の注意を払う必要があります。
- 子どもたちが安心できるよう、誠実に、年齢に応じた方法で情報を伝えましょう。
- 子どもたちの声に耳を傾け、理解してあげましょう。
- 子どもたちが不安な気持ちを表現できる、安全で支えのある環境や雰囲気を作りましょう。
- 親やご家族と安心して過ごせるように心がけましょう。
- 学習や遊び、リラクゼーションなど、毎日の日課やスケジュールが守られるようにしましょう。インターネットやゲームの時間が長くなりすぎないように見守りましょう。
また、子どもたちと一緒にコロナウイルスやストレスについて考えるとき、以下のウェブサイトも助けになるかもしれません。
- 日本赤十字社
- Ana M.Gomez (”Japanese”より閲覧可)
- 国立成育医療研究センター
〇 隔離されている人への支援
隔離されている人は孤独感や心理的孤立感を抱きやすくなります。その結果、気分の落ち込みや不安、怒り、過度な疑い深さなど、こころに変化が生まれるかもしれません。
- 感染対策上安全なコミュニケーションツールを活用しましょう。(ビデオ通話、ソーシャルネットワーキングサービス等)
- 最新で正確な情報を伝えましょう。
- 簡単な運動を日課に組み入れましょう。
- 落ち込みや不安に対するリラクゼーションの練習をしましょう。
高齢者への支援や隔離されている人への支援に関しては以下のウェブサイトが参考になります。