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- 医療従事者のこころのケア
新型コロナウイルス感染症の治療に携わる医療従事者の皆様、日々の診療に対して心より敬意を表します。新型ウイルス流行期では、防護服を着用しての活動、診療についての公表を控えるなど、これまでの災害時の対応とは異なる点があります。
1. 直接対応する医療従事者に特有のストレス要因
- 感染者や遺体などに接した医療従事者に対する偏見
- 厳格なバイオセキュリティ
- 医療の需要増大 → 厳しい労働スケジュール
- 厳しい労働スケジュールや最前線で働く人に対するコミュニティ内の偏見のために、社会的支援の利用が減少すること
- 基本的なセルフケアを実践するための余力がなくなること
- 感染に関する情報が不十分の患者に長期間暴露すること
- 最前線で働くことにより特に強まる、他者へ感染させることへの恐れ
上記の特殊性を踏まえた上で、それぞれの立場でできることを行っていきましょう。
2. 医療従事者のこころのケア
医療従事者が健康を維持するために以下のことが重要です。
〇 現在受けているストレスについて正しく理解すること
現在の状況でストレスを感じることは、当たり前のことです。
仕事をしている方の中には、仕事を十分にこなせていないと感じている人や、無茶な要求をされている方もいるかもしれません。ストレスやストレスと関係する感情は、たとえあなたがそのように感じられていたとしても、決してあなたに能力がないとか、あるいは弱い人間だということを、意味しているのではありません。実際には、ストレスは役に立つこともあります。まさに今、ストレスを感じることで、仕事に対して前向きに取り組み、目的意識をもつことができるのかもしれません。この時期に、ご自身のストレスと心理社会的な健康を大切にすることは、あなたの体の健康管理と同じくらい大切なことです。
〇 基本的なニーズを満たすこと
基本的なニーズを大切にして、それに役立つ対処法を行いましょう。役立つ対処法とは、仕事中にこまめに小休止や休憩をとること、健康な食品を十分に食べること、運動をすること、さらに家族や友人と連絡を取り合うことも含まれます。その場しのぎの対処として、タバコ、お酒、あるいは他の違法薬物などを使うことは長期的には、あなたの精神および身体的健康を悪化させます。また、刺激的な映像や心配な情報はあなたのストレスを高め、自己効力感や全体的な健康を損なう可能性があるため、メディアの制限も必要です。
〇 周囲の人(特に信頼できる人)とコミュニケーションをとり続けること
働いている方の中には、偏見によって、不運にも家族やコミュニティから排斥される経験をされている方がいるかもしれません。可能な限り、あなたの信頼する人と連絡を取り続けてください。電子機器は、そうした際に大切な人と連絡を取り続けるための方法の一つです。同僚、上司、または他の信頼できる人に援助を求めましょう。また、同僚もあなたと同じような経験をしている可能性があることに留意してください。同僚と話をして、お互いにサポートし合いましょう。ミスや不足は建設的な言い方で確認し、訂正し、お互いに褒め合いましょう。褒められることはモチベーションを高め、ストレスを緩和します。あなたの苛立ちやその解決方法を共有しましょう。
〇 メンタルセルフチェック
抑うつやストレス障害の症状が出ていないか、繰り返しチェックしましょう。例えば、悲しい気分が長く続くこと、不眠、不快な記憶、絶望など。同僚や上司に話すか、必要に応じて専門家に相談してみてください。そして、是非自分を褒めてください。障害物や失望がありながらも、困っている人のケアをするという立派な仕事をあなたが果たしていることを思い出してください。公式にでも内々にでもよいので、家族、友人、同僚にも同様に伝えましょう。
〇 職業性ストレス簡易調査票
3. チームリーダーが取り組むべきこと
医療チームのリーダーがスタッフを慢性的なストレスや精神的健康の悪化から守っていくために以下のことが重要になります。
- スタッフの心身の健康が悪化した場合に、それを伝えやすい環境づくり
- スタッフが休息をとり、心身を回復する余裕があるかどうかを検討
- 心配なことを言葉にできるよう短時間の定期的な話し合いの場を設ける
- 同僚間のピアサポートを奨励する
- メンタルヘルスや心理社会的サポートを受けることを促し、保証する
- 良質なコミュニケーションを確保し、正確かつ最新の情報がすべてのスタッフに提供されるよう努める
- チームリーダー自身がストレス軽減のためのセルフケアを行う手本になる
- IASC 「新型コロナウイルス流行時のこころのケア(日本語版)」を改変